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見聞録、市政報告などのブログです。

大矢 紀 先生

先月、川崎市の文化大使も務めていただいている日本画家の大矢 紀先生のお宅に伺い、長いお付き合いですが、初めてアトリエを見せていただきました。 大矢先生は、新潟県長岡市のご出身で名誉市民でもいらっしゃいますが、長年住んできた川崎市の役に立ちたいと33作品を、市に寄贈してくださりました。 ところが、令和元年東日本台風で川崎市民ミュージアムが水没した際に、ほぼ全て32点が水没した倉庫で数日間泥水に浸かり多大な被害を受けました。その後応急処置等施した結果、修復可能な作品は僅か7点と報告を受けました。 そこで先生は、報告に来た市職員に対し、修復不可能と判断された25作品の行く末について尋ねたところ「その状態で保管していく」と言われ、「いずれ邪魔になったら廃棄もありうるのか」尋ねたところ、「今はないし、そうした判断は難しいと思うが、数年後、傷みが生じるなどあった場合は、そういうこともあるかもしれない」と言われたそうです。「精魂込めて描いた作品は我が子と同じ」 この言葉は、被災後何度も先生からお聞きした言葉です。そこで、自分で修復すると伝えたところ「作者本人が修復したら、もはやそれはオリジナルではなくなるから推奨しない」と、専門家でもない職員から信じられない言葉を聞いたとのことです。結局「怒りを通り越して呆れた」先生ご自身が処置の済んだ作品の修復作業に、業者と協力しながら取り組んでおられます。最初に修復された作品は、そのための顔料も、額縁などの装丁も先生がご自身で負担されていたにも関わらず、市は、当初その旨を委員会で一切報告しませんでした。 被災後の市の対応もさることながら、そもそも、寄贈する作品リストを送りながら一向に返事をしない当時の職員に不信感を抱いていた先生から、市の意向を確認して欲しいと頼まれた時に、「市に寄贈しない場合はどうされるのか」尋ねたところ「長岡市も欲しがっているから、其方に寄贈する」とおっしゃっていました。たられば、かもしれませんが、あの時意向確認しなければ、こんなことにはならなかったかもしれないと思うと複雑な気持ちです。 先生の背景にある作品は、これから修復に取り掛かる4作目です。作品名をお聞きするのを忘れてしまいましたが、先生の作品の大きさがお分かりになると思います。 ちょうど伺った日にアトリエで先生が描かれていたのが、2月7日の日経新聞に掲載されたイチゴの作品です。1月22日が締め切りと伺っていたので、いつ掲載されるか楽しみにしていました。気づいた人いますか?