みらいを生きる子どもたちのために
連載 64
小児がん患者が必要な予防接種の再接種の助成を
「わが子は小児がんです。他都市のように予防接種の再接種にかかる費用を川崎市でも助成してください。」あるお母さんからの悲痛な声が私のメールに届いたのは昨年5月のことでした。
小児がんには化学療法等の効果が高く、子どもたちは大人でも辛い治療に耐えていますが、その代償として乳児期に予防接種で獲得した免疫の殆どを失う場合があります。また小児がんは、未就学児の時に発症する患者も多いことから、集団予防接種自体を受けられないケースも多々あるそうです。
治療を乗り越え病気が改善しても身体には免疫がないため、予防接種を受けなければ学校へ行くことも、子どもらしい生活を送るなど社会復帰も叶いません。そのため再接種が不可欠ですが、全てを受け直す場合は自己負担で最大30万円ほど必要です。
この訴えを受けてすぐの6月議会。私は「失った免疫を調べる検査費用と再接種の助成」を一般質問で訴えましたが、「予防接種で副作用が発生した場合の対応を考慮すると再接種についても国が実施すべきと考える」という答弁で終わってしまいました。
その後も医師会の先生との意見交換、患者数などの調査を進め、引き続き当局と交渉を続けていたところ、あのお母さんから「議会に訴えたい」という強い思いを伝えられました。手段としては「請願」と「陳情」があり、多少の違いはありますが、川崎市議会では、陳情も請願も等しく委員会で審査が行われます。今回は紹介議員の必要がない「陳情」での提出を薦め、内容について相談に乗らせていただきました。お母さんも時には心無い言葉に傷つき、また悩みながらも、お子さんのために1242通の署名を集めることができました。
その後、11月の健康福祉委員会で、この陳情審査が行われた結果、全会一致で採択となりました。更に市から国に対し意見書を提出することについても12月13日の本会議で全会一致で賛成され、国に提出されました。
「勇気を出して良かった」
結果を受け、そのお母さんが話された言葉が今でも心に残っています。「小児がん患者は少数で孤立している保護者は多い。この先も小児がんがなくなるわけではないので、未来の患者家族も救いたかった。病気を克服して長い未来を生きる子どもたちのためにも勇気を出して良かったです」